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札幌高判平成27年4月24日。北海道新聞にコメント掲載

衆議院小選挙区選挙における投票価値の較差違憲訴訟について昨日(24日)、札幌高等裁判所の判決がありました。

当該判決に関する小生のコメントが北海道新聞に掲載されました。

「『違憲状態 理屈通らぬ』1票の格差札幌高裁判決 原告側、厳しく批判」北海道新聞2015年4月25日朝刊
どうしん電子版 http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/society/society/1-0127191.html

北海学園大 法科大学院 ・木下和朗教授(憲法学)の話 1票の格差を是正する作業は国会にしかできず、ある程度の猶予期間は必要だ。その点で、国会の裁量を認めた最高裁判決に沿っており、穏当な判決と言える。格差是正に必要な「合理的期間」をどう捉えるかは難しい問題だが、国会は選挙制度調査会を設け、2014年9月から実際に格差是正に向けた会議を開いており、「 1人別枠方式 」に代わる新たな枠組みについても話し合っている。今回の判決は、一連の取り組みの過程を評価したと言えるのではないか。


コメントを補足します。
平成23年最高裁大法廷判決は、区割基準としての一人別枠方式を違憲と判断し、国会がこの方式の廃止など投票価値の平等にかなう立法をすることを求めています。また、平成25年の最高裁大法廷判決は、今回の総選挙における区割規定(以下、「本件区割」と言います。)は一人別枠方式の構造的な問題を最終的に解決するものでないとしています。両判決を前提にすると、今回の判決が指摘する通り、本件区割は最低限の改正にとどまり、投票価値の平等に反する状態にあると解さざるを得ません。さらに、憲法学説の多数は、最大較差が1対2を超える区割規定は原則違憲としますから、本件区割を違憲であると解していると言えます*1。したがって、判例または多数説いずれの立場に拠っても、本件区割は投票価値の平等という憲法上の要求を満たしていないと結論できます。
小生のコメントも、本件区割は選挙当時、国会の立法裁量を考慮しても投票価値の平等に反するという解釈を支持し、これを前提にした上でなされています。
残る問題は、本件区割が国会が合理的期間内に較差是正を行ったものと評価できるかです。そもそも論として、区割規定が合憲または違憲かを判断する際、このような問題を考慮すべきかについては見解が分かれています。最高裁をはじめ裁判所は考慮すべきという立場をとり、今回の裁判の原告は考慮すべきでないという立場をとっています。
掲載された小生のコメントは、合理的期間に関する裁判所の立場を支持した上、今回の判決がどのような観点から本件区割を合理的期間内の是正と判断したのかを述べた部分が採用されています。ただし、判決は国会の取り組みを肯定的に「評価」しているわけでなく、「注視」しているとする方が正確な表現だったかもしれません。

*1:詳しくは、木下和朗「第14講 選挙権の平等と選挙制度」中村睦男(編著)『はじめての憲法学[第3版]』(三省堂・2015年)145-160頁参照。